インターネット事件の訴訟,仮処分で,管轄がどこの裁判所にあるか,という問題です。
東京地裁民事9部の最近の運用は
不法行為地は結果発生地も含むので,被害者が画面を見た場所に管轄がある,ということらしいです。
以前は,そこまで明確には言われなかったのですが
これを前提に検討すると
削除請求は,不法行為に基く,ということでよいのでしょう。
次に,発信者情報開示請求も,条文上それらしい要件があるので,よいのでしょう。
東京に本社のあるプロバイダに対して,日本全国で訴訟ができます。
では,ログ保存請求は,不法行為に基づく,請求なんでしょうか。
2ちゃんねる関連で,東京地裁(本庁)以外のもの
いずれもパケットモンスター相手で,削除だけ,またはIP開示請求付き
- 横浜地裁平成21年(ワ)第2175号
- 大阪地裁平成22年(ヨ)第1440号
- 東京地裁立川支部平成22年(ヨ)第226号
- 名古屋地裁岡崎支部平成22年(ヨ)第82号
- 神戸地方裁判所平成22年(ヨ)第346号
地方に本社のあるプロバイダに対し,東京地裁で発信者情報開示請求訴訟を提起した件,受理され,終結しました。
2011/4/20追記
最近,不法行為地では発信者情報開示の管轄が取れなかった,という話をよく聞くようになりました。
いちど,最高裁に判断してもらいたいものです。
2011/5/7追記
地方に本社のあるMVNOに対し,東京地裁で発信者情報開示請求訴訟を提起したところ,受理され期日が決まりました。訴訟だと管轄上申だけで受理される感触。答弁書が出てくれば,応訴管轄になるから問題は小さいのでしょう。
2013/3/6追記
文献を,とのコメントがありましたので1つ上げておきます。
東京地裁H17.1.31決定(判タ1191号339頁)は,「この「不法行為があった地」には、不法行為が行われた地のほか、不法行為の結果が発生した地も含まれる。しかるに、申立人は、インターネットを通じて、我が国のみならず世界中に相手方の商標権の侵害行為を行っているのであって、申立人の標章が付された画面を東京都内で見ることができるが、これは不法行為の結果に当たるものである。」としています。
ログ保存請求は、発信者情報開示請求権を被保全債権とするので、同じように考えてよいように思われますが、どうでしょうか。
投稿情報: 通りすがり | 2010年10 月 4日 13:37
何故、日清のCMの件で2ちゃんねるのIPアドレスを開示させようとしているのですか?
投稿情報: | 2010年10 月20日 02:45
2ちゃんねるのIPアドレスではなく書き込み者のIPアドレスですよね。もう開示されましたが
今後プロバイダーに書き込み者の個人情報の開示請求も行うのでしょうか?不法行為的な部分がまったく見当たらない書き込みもありますが、これに対して恫喝的なことを行い、ネットでの発言の自由さが損なわれる影響も弁護士として考慮するべきではないでしょうか。
またこの開示請求で話が蒸し返されて逆に二次被害的な物も発生しています。神田さんは当然そのようなことも予見できたと思いますがきちんとクライアントにその可能性も説明したのでしょうか?
投稿情報: たんた | 2010年10 月22日 01:22
個別の案件についてはお答えできませんが
不法行為的な部分が全く見当たらなければ,裁判官は認めないでしょう。一般論として
投稿情報: カンダ | 2010年10 月25日 03:19
いつも勉強させていただいております。
数点、質問があります。
削除請求については、結果発生地である画面を見た場所ということでよいのかもしれませんが、発信者情報開示請求についてはどうでしょうか。同じように不法行為としては成り立ちにくいという考え方もあると思います。
もし不法行為ではなく、他の請求権に基づいたものであるとした場合、それでも全国どこでも訴訟提起できるものでしょうか。
ご教示をお願いしたくよろしくおねがいいたします。
投稿情報: ゆ | 2011年1 月 7日 14:14
昨年末に東京地裁で,地方に本社のあるプロバイダを相手に,発信者情報開示請求訴訟を提起しました。管轄上申では,「不法行為地は東京」と書いておきました。この訴状を東京地裁は受理し,期日も指定されています。
今後,移送の申立がされたとき,裁判所が管轄についても判断するかもしれません。
投稿が不法行為にあたらない場合については,検討したことがないため,課題とさせてください。
投稿情報: カンダ | 2011年1 月 7日 14:54
私は、さいたま地裁で地方に本社のあるプロバイダーを相手に不法行為として発信者情報開示請求訴訟を提起しましたが、管轄について特に記載していなかったところ、地裁は、地方の裁判所に裁量移送する決定をしました。即時抗告を申し立てたのですが、東京高裁第17民事部は平成23年3月4日付けで「発信者情報開示請求権は、特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律第4条所定の条件が満たされる場合に、特定電気通信役務提供社に対し、同人に課せられた守秘義務を解除し、開示請求者の請求に応じて発信者情報の開示に応じるべき義務を発生させるものであるから、それ自体経済的利益を目的とするものではなく、これに基づく訴えは、財産上の訴えとはいえず、同法5条1号の適用もない。」として棄却しました。財産上の訴えとはいえないというのが判断ですが、発信者情報の開示は損害賠償請求に必要なものですから、明らかに財産上の訴えに当たると思われます。更に抗告しようかと思っています。
投稿情報: rn | 2011年3 月 7日 20:39
私が地裁に管轄上申を出したときは,5条1号の財産権上の訴えではなく,5条9号の不法行為に関する訴え,で書きました。これで受理されています。
投稿情報: カンダ | 2011年3 月 8日 07:25