街でスレッド削除というものを見かけたので,法理論等の問題について東京地裁の裁判官と話をしてきました。
もちろん,具体的な申立の検討という形式で
コメント追記タイプのブログでも同じ問題が生じうるはず。
1 スレッド削除請求権
そもそも,スレッド削除請求が可能なのか,という問題ですが,裁判官によると,まったく不可能とは考えないが,これを認めるには,相当手間ひまかかり,議論も必要だろうとのことでした。
ネットの情報削除は,原則として記事単位であって,権利侵害の記事だけを削除すれば権利の回復は図れるのだから,スレッド削除には慎重にならざるを得ない,という趣旨と思われます。
おそらく,スレッドの存在自体が誰かの権利を侵害するのなら,その人に削除請求権もあるということでしょう。
2 問題点
問題は(1)権利侵害ではない記事も削除してしまうことと,(2)裁判官の判断日以降の記事も削除してしまうこと。
(2)は,裁判官の読んでいない記事が,当該裁判官の判断により消されてしまうという点で,より深刻だと思われます。
3 削除要件
そうすると,(1)の問題をクリアするための要件として,いかなる意味でも権利侵害とならない記事の不存在,(2)の問題をクリアするための要件として,スレッドが裁判官の判断日以降は更新されていないこと,の2要件が必要ではないかと思う。
たとえば,権利侵害の投稿を誘導するためのスレッドで,すでに更新停止しているものなど。
2011/4/20追記
スレ削除仮処分の例
東京地裁平成22年ヨ第3758号
大阪地裁平成22年ヨ第1614号
スレ削除を否定した裁判例
東京地裁平成21年2月5日判決
将来生ずべき侵害の予防としての削除を求めるものであるとしても,侵害行為が明らかに予想され,その侵害行為によって被害者が重大な損失を受けるおそれがあり,かつ,その回復を事後に図るのが不可能ないし著しく困難になると認められるときは侵害行為の差止めを肯認すべきものと解される(最高裁判所平成14年9月24日第三小法廷判決)
2011/5/7追記
妨害予防請求権で構成したものもあったので,再度スレッド削除仮処分にチャレンジしてみました。が,東京地裁9部の裁判官会議の結果,スレッド削除は認めない,という方針になったそうです。
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