1.コピペによる名誉毀損・プライバシー侵害
2013年12月3日の読売新聞記事と,最所義一弁護士のブログ(
http://minatokokusai.jp/blog/5762/)によると,東京高裁平成25年9月6日判決は,「2ちゃんねるを見た多くの人が,転載元の記事や雑誌を読んだとは考えられず,情報を広範囲に広め,社会的評価をより低下させた」旨の判断をして,転載記事による名誉毀損を認定したとのことです。
これは,コピペの違法性として検討されてきた問題で,インターネット以前においては,マスコミによる転載記事の違法性,引用記事の違法性として扱われています。
2.問題の分類
(1) 社会的評価の低下
コピペの違法性は,名誉毀損事件では,まず「社会的評価の低下」があるか,という点で問題となります。
つまり,コピー元の記事で社会的評価が低下しているから,コピペによっては社会的評価は低下しないのではないか,という問題です。
この点については,かつて「フジテレビによる本件特集番組の視聴者と本件ホームページ動画の視聴者が完全に重なることはあり得ない」として,転載による社会的評価の低下を認める東京地裁平成22年9月27日判決がありました。
今回の高裁判決も,読者の範囲が違うという点を重視し,社会的評価の低下を認めているものと考えられます。
(2) 違法性阻却事由
コピペの違法性は,次に違法性阻却事由の点が問題となります。
コピペが真実であれば,違法性が阻却されますが,この「真実性立証の対象」が,コピー元の記事の存在そのものなのか,コピー元の記事の内容なのか,という問題です。
この点については,「転載記事の存在それ自体が真実性の立証対象である旨を主張するが,本件記事4は,読者である一般人を基準として考えれば,被告が原告や「○○会」等に対する批判をする材料として転載しているものと評価できるから,転載された内容それ自体について真実であるとの立証が必要」とする東京地裁平成24年5月29日判決などがあります。
つまり,コピー元の記事があったかどうかではなく,コピペした内容が真実かどうか,が問題とされます。
(3) 真実と信じるにつき相当の理由
コピペした記事の内容が真実ではない,という場合は,次に「真実と信じるにつき相当の理由」があったかどうか,という点が問題となります。
「自分が書いたものではない」という反論も,この分類に入ると思われます。
この点については,最高裁平成14年3月8日判決が「掲載記事が一般的には定評があるとされる通信社から配信された記事に基づくものであるという理由によっては、記事を掲載した新聞社において配信された記事に摘示された事実を真実と信ずるについての相当の理由があると認めることはできない」としていますので,コピペだからといって真実と信じるにつき相当の理由があったとは言えないことになります。
新聞社の記事を配信したネットニュースについても,東京地裁平成23年6月15日判決は,「本件サイトに人の人格的利益を侵害するような写真が掲載されないよう注意し,掲載された場合には速やかにこれを削除すべき義務を負う」としています。
つまり,コピー元の記事を信じました,だけで責任を免れることはできないということです。
(4) プライバシー侵害における非公知性
コピペの違法性は,プライバシー侵害の事案では「非公知性」の要件が問題となります。
つまり,非公知の情報でなければプライバシー侵害ではないとされる関係で,最初に書いたコピー元の記事だけが違法で,コピペは非公知ではなく違法ではないのではないか?,という問題です。
この点について東京高裁判決には,「限定された範囲の者にしか知られていなかった情報である」として非公知だとして,コピペによるプライバシー侵害を認めたものがあります。
ただ,他方でコピペによるプライバシー侵害を認めなかった高裁判例もあり,現在上告中とのことです。
3.コピペはどのようなケースで違法になるか
今回の東京高裁判決を受けてまとめると,コピペであっても「社会的評価の低下」は認められ,コピペした内容が反真実であれば,たとえコピー元が報道記事などであっても,名誉権侵害の責任を負わねばならない,ということになるでしょう。
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